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資本提携の形はもっと柔軟になる



近年、国内外での業務提携が活発化しています。その背景には、各社・個人の「内製化へのこだわり」が変化していることが一つの大きな要因であると考えます。


かつては自社の技術を獲得して守り抜くことが永続的な収益に直結していました。よって、投資による他社の技術吸収によって自前の技術力を身に着けることを第一義に置く例が多くありました。しかしながら以下で確認できるように製品ライフサイクルは短くなってます。


これは自前での投資に対するリターンが少なくなっていることを意味します。消費者の価値観の多様化、ITプラットフォームによる技術開発競争の激化、技術のキャッチアップ速度の上昇などにより、自前の技術開発資金と開発力を十分に保有し続けることが非効率となるばかりか、投資の成功確率を下げる結果となる可能性があります。

以下ごく簡単なモデルを提示します。

①製品投資回収期間が長期に渡る場合

(投資額:100 投資回収年数:10年 キャッシュ/年:50 実現確率:50%)

→IRR 49% 未実現時損失額:50

②投資回収期間が短期になる場合

(投資額:100 投資回収年数:3年 キャッシュ/年:50 実現確率50%)

→IRR 23% 未実現時損失額:50

③②の前提で10名で投資・役割分担した場合の一人あたり

(投資額:10 投資回収年数:3年 キャッシュ/年:5 実現確率:60%)

→IRR 36% 未実現時損失額:4


結論として①が見込めないライフサイクルの状況では、②③の選択となりますが、③を選択して柔軟な投資および役割分担を行うことで、失敗のリスクを10分の1以下に抑えられる上に、成功確率が上がることで大幅なIRRの向上が見込めます。③で成功確率を上げているのは、外部パートナーとの役割分担を自由に設計することで、ターゲット技術開発・販売の速度、柔軟性が増加すると考えられるからです。


以上のことから、自前ですべての投資を賄うことに対するリターンが薄れており、他社との役割分担としての業務提携の数は大幅に伸びていくと考えれます。お互いが無理に吸収する方向ではなく、共存する方向での提携を模索することになります。 一方でライフサイクルに比して、業務提携解消スパンも短くなっていき、プロジェクト毎に合同チームを編成していくという意識に切り替わっていくように思えます。では、資本提携の数は少なくなるのかと言えば、むしろ増加することになります。なぜならプロジェクトの成否は、構成員の信頼関係に比例するものであり、少なくともプロジェクト単位でのつながりを強固にするための資本投入はその成功確率を上昇させるものになり得るからです。

今後投資を検討する企業・個人は、役割分担を主軸とした自前にこだわらない提携にオープンな相手先を求めるようになります。そのことを意識して、マーケットからのオファーを受け入れるための組織環境整備はハード、ソフトの両面で常に意識していかなければなりません。


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