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なぜ今、データセンター投資なのか
データセンター投資は、ここ数年で急速に注目を集めるようになりました。AIやクラウド、DXといった言葉が日常的に語られるようになり、その基盤となるインフラへの関心が高まっているからです。しかし、投資の世界では「注目され始めた時点」は、必ずしも最良の投資タイミングとは限りません。重要なのは、話題性ではなく、構造と時間の位置です。現在のデータセンター市場は、単に成長が見込まれるという段階を超え、投資家にとって非常に特異な局面にあります。その理由は、需要の確実性、供給の制約、そして投資行動のタイミングが、同時にずれ始めている点にあります。 需要は「予測」ではなく「前提」になった かつてデータセンター需要は、IT成長の延長線上で語られていました。しかし現在では、その性質が変わっています。生成AIの普及により、計算資源は一部のIT企業だけのものではなくなりました。製造業、金融、医療、エンターテインメントといった幅広い産業が、大量のデータ処理を前提に事業を再設計し始めています。 ここで重要なのは、データセンター需要が「景気が良ければ増える」類のものではなくなっ


ベンチャー企業としての動画活用法
投資家から資金を調達するうえで最も重要なことは、より多くの投資家と接点を持ち、事業について説明する機会を増やすことに尽きます。なぜなら、投資判断は決して画一的な基準で行われるものではなく、投資家ごとに明確な「好み」や重視点が存在するからです。 成長ステージ、事業分野、ビジネスモデル、関わっている人材、経営者の資質、財務状況など、どの要素が最終的な投資判断に強く影響するかは、実際に会話をしてみなければ分からないことが多くあります。この意味で、投資家との接触回数そのものが、資金調達の成功確率を大きく左右すると言えます。 代表者一人に依存した資金調達の限界 特にベンチャー企業が次の成長フェーズに進むための資金調達を行う際、代表者一人がほぼすべての資金調達活動を担っているケースが少なくありません。仮に、代表が1日に資金調達に割ける時間を4時間とした場合、実質的にプレゼンテーションを行える投資家は1日1名程度が限界でしょう。非常に順調に進んだとしても、1か月で接触できる投資家は20名程度に留まります。 これは起業家側にとっての制約であると同時に、投資家側か


投資家の第一印象を上げるために
当社はベンチャーキャピタルとしての業務上、スタートアップ企業から数多くの出資のご相談をいただいています。すべての案件を詳細に検討できるわけではない中で、投資判断の初期段階において、どのような点を重視しているのか。今回は、当社が実際に資本参加してきた企業の特徴を、検討初期フェーズに焦点を当てて整理します。 ビジネスモデルは「シンプルであること」が最大の強みになる 投資検討の初期段階において、最初に確認するのはビジネスモデルの構造です。スキームが過度に複雑なモデルは、一見すると精緻に見える一方で、投資家にとってはいくつかの懸念を生みます。 理解に時間を要するモデルは、それだけで初期検討のハードルが上がります。また、利害関係者が増えることで、事業が計画通りに進む確率は低下しやすくなります。さらに、役割が分散することで、投資家としてどの部分に価値を見出し、どのように関与すべきかが不明瞭になりがちです。 このため、ビジネスモデルは可能な限りシンプルであることが重要だと考えています。ただし、シンプルであれば十分というわけではありません。そこに「新しい切り口」


資本提携の形はもっと柔軟になる
製品ライフサイクルの短期化が進む中で、企業がどのように投資判断を行うべきかという問いは、年々重要性を増しています。かつては、自社で技術を内製化し、長期間にわたって投資回収を行うことが合理的な戦略でした。しかし現在では、その前提そのものが揺らぎ始めています。 そこで、投資回収期間と役割分担の違いが、リスクとリターンの構造にどのような影響を与えるのかを、非常に単純化したモデルで整理します。 ①製品投資回収期間が長期に渡る場合 (投資額:100 投資回収年数:10年 キャッシュ/年:50 実現確率:50%) →IRR 49% 未実現時損失額:50 このケースは、製品ライフサイクルが長く、市場環境も比較的安定している状況を想定しています。十分な投資回収期間が確保できるため、成功した場合のリターンは非常に大きくなります。一方で、実現しなかった場合の損失額も大きく、投資成果が二極化しやすい構造を持っています。このような前提が成立する環境では、自社単独での大規模投資は今なお合理的な選択肢になり得ます。 ②投資回収期間が短期になる場合 (投資額:100 投資回収


エンジェル投資家は経営者を見ている
エンジェル投資家とは、その名の通り、投資先企業にとってはエンジェルのような存在に映ることがあります。一般的なベンチャーキャピタルでは投資判断が難しい状況であっても、独自の判断基準に基づき、柔軟に投資を決断することがあるからです。 しかし、エンジェル投資家は決して慈善事業として投資を行っているわけではありません。寄付でもボランティアでもなく、彼らの動機はあくまで社会的付加価値と企業価値の創出にあります。ハイリスクであることを十分に理解したうえで、それに見合うハイリターンを冷静に期待しています。 投資対象は「不確実性の塊」であるアーリーステージ エンジェル投資家が主に投資対象とするのは、シードやアーリーステージと呼ばれる段階の企業です。このフェーズの企業は、事業の先行きが見通しにくく、数字や計画だけを見れば不安要素が多いのが実情です。 それでも投資が行われるのは、投資判断が確率論的な「賭け」ではないからです。エンジェル投資家は、不確実性の中にこそ将来の成長余地を見出し、その可能性を見極めようとします。その際に重視されるのは、事業そのもの以上に「誰がそ


ベンチャーキャピタルが求めるリターン
事業がまだ軌道に乗っておらず、いわゆるベンチャー企業と呼ばれる状況にある場合、資金調達の選択肢としてベンチャーキャピタルからの出資は、優先的に検討すべき手段の一つだと考えています。 事業の初期段階は、失敗のリスクが極めて高いフェーズです。この段階で、代表者の個人保証を前提とした銀行借入を行うことは、経営判断というよりも人生を賭けた危険な選択になりかねません。万が一失敗した場合、事業だけでなく、個人としての再起まで困難になる可能性があるからです。 銀行業は、基本的にローリスク・ローリターンで設計されたビジネスモデルです。一方で、ベンチャーキャピタルは、ハイリスク・ハイリターンを前提とした投資モデルを取っています。この構造の違いを踏まえると、リスクの高い成長段階にあるベンチャー企業こそ、ベンチャーキャピタルを活用すべきだと言えるでしょう。 ベンチャーキャピタルの最大の関心事は「リターン」 ベンチャーキャピタルから出資を受け入れるにあたって、まず理解しておくべきなのは、彼らの最大の関心事が何かという点です。それは、運営しているファンドの投資家に対して、


出資法と貸金業法を理解した投資を
資金調達を検討する際、事業内容や成長性よりも前に、必ず確認しなければならない前提があります。それが、資金調達スキームの適法性です。どれほど魅力的な事業であっても、調達方法が違法であれば、その事業は継続することができません。 資金調達の方法は突き詰めると二つしかありません。負債を増やすか、資本を増やすかです。前者には金銭消費貸借契約や社債の引受などがあり、後者には株式引受による増資などが含まれます。この基本構造を理解せずに、表面的な利回りや条件だけで資金を集めようとすると、意図せず法令に抵触するリスクが高まります。 高利回りや元本保証がもたらす危うさ 幅広く資金を集めようとする場面では、不特定多数の資金提供者に対して、強いメリットを提示したくなる心理が働きがちです。例えば、「月利5%」「年利60%」「元本保証」といった条件は、一見すると非常に魅力的に映ります。しかし、これらの条件は、資金調達の形態によっては明確に違法となります。 資本を増やす、つまり出資を受ける形であるにもかかわらず、元本や利回りを保証することは許されていません。また、負債として資


事業買収時にどんなポイントを見るのか
事業承継のニーズは年々高まっています。その一方で、アーリーリタイアやシリアルアントレプレナーを志向する経営者も増え、事業を「引き継ぐ側」「引き継がれる側」という関係は、以前にも増して多様化しています。このような環境の中で、事業承継を検討する際に重要になるのが、引き受け側、すなわち承継者の視点です。 本稿では、感情的な相性や経営者個人の思い入れではなく、 企業価値の算定 に焦点を当て、承継候補者がどのような観点で企業を評価しているのかを整理します。 企業価値は「自分で決めるもの」ではない まず押さえておくべき前提は、企業価値は自社で決めるものではないという点です。企業価値とは、あくまで第三者、あるいはマーケットが決めるものであり、承継候補者の動機や戦略によって、その評価軸は変わります。 とはいえ、どのような承継者であっても共通して確認する最低限の項目があります。引き受け側は、それらを通じて「投資として成立するか」「将来に向けた伸びしろがあるか」を冷静に見極めています。 財務内容が示す「守りの企業価値」 企業価値評価の第一歩は、財務内容の確認です。こ


中国投資家との交渉留意点
現在、中国の民営企業数は1億社を超え、人口は約13億人、インターネット利用者は7億人規模に達しています。名目GDPは日本の約3倍にまで拡大しており、市場規模、競争環境、国際化の進展度を見ても、世界でも屈指の競争が激しく、かつ高いポテンシャルを持つ巨大市場であることは疑いようがありません。 このような環境の中で、多くの中国企業や投資家は、国内競争を勝ち抜くための手段として、海外企業への出資や提携を重要な経営戦略として位置づけています。単なる資金運用ではなく、自社の競争力を高めるための戦略投資として、日本企業を含む海外企業に強い関心を持っています。 一方で、日本企業側が中国投資家からの出資を受け入れようとした際、双方の意欲が必ずしも噛み合わず、交渉が停滞・破綻するケースも少なくありません。以下では、中国企業・投資家の視点に立ち、その主な要因を整理します。 交渉プロセスにおける信頼構築の捉え方の違い 中国からの投資を巡る交渉において、最初の障壁となりやすいのが、日中間の価値観の違いです。日本企業からは、「期待する水準の回答が迅速に返ってこない」「交渉が
コラム-投資家の視点
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